鋳鉄鋳物

炭素とケイ素を主成分とした合金の鋳鉄鋳物。組織の割合によって、ねずみ鋳鉄や球状黒鉛鋳鉄、CV鋳鉄などに分類されます。ここでは、鋳鉄鋳物についてまとめました。鋳鉄鋳物の特性や種類について詳しく解説していきます。

鋳鉄鋳物の特性

鋳鉄鋳物は鋳鉄を溶かし、型に流し込んで作られた製品です。鋳鉄は添加元素や製造方法によっていくつかの種類に分類されます。それぞれに異なる特性があり、用途に合わせて使用する種類が異なります。

鋳鉄は鋳鋼よりも炭素の含有量が多いのが特徴です。融点が低いため低い温度でも鋳造ができます。複雑な形状のものでも比較的安価に製造できるので、製造のコストダウンにもつながるでしょう。鋳鉄は比較的、切削加工が簡単にできます。切削しやすい金属ではありますが、その分工具や加工方法は適切に選定しなければなりません。

一方で、鋳鉄は高度が高いため、刃先が鋭い工具を用いると欠けやすいという特徴があります。鋳鉄はドライ加工が一般的ですが、粉塵による影響を防ぐためにウェット加工を行うケースもあります。ウェット加工をするときは切りくずがつまりやすいので、注意しなければなりません。鋼と比較すると折れやすいですが、そのまま製品として使えないことが多いので、加工は必要です。

切削加工が簡単といわれる鋳鉄鋳物ですが、鋳鉄でも種類によって加工の難易度は異なります。種類によって工具や加工法を選定し、適切に加工しましょう。

鋳鉄鋳物の種類

ねずみ鋳鉄

ねずみ鋳鉄は片状黒鉛鋳鉄とも呼ばれています。黒鉛によって表面がねずみ色にみえることから、ねずみ鋳鉄といわれています。鋳鉄の中でも鋳造しやすく、被削性に優れているのが特徴です。一般的に鋳鉄といえば、ねずみ鋳鉄を指します。熱伝導が良いねずみ鋳鉄は耐摩耗性・耐食性に優れた性質を持つことから、機械部品や水道管など、幅広いシーンで使われています。

ねずみ鋳鉄はJIS記号でFCと略されます。FCの後ろには引張強度を表す数字が記載されます。ねずみ鋳鉄は融点が低いため、複雑な型でもスムーズに流れてくれます。硬さもしっかりあるので、鋳造に適しています。一方で、もろく割れやすいので、溶接にはあまり向いていません。

球状黒鉛鋳鉄

球状黒鉛鋳鉄にはマグネシウムやセリウムが配合されており、組織内の黒鉛の形状が球状になっています。強度に関してはねずみ鋳鉄の数倍もあるのが特徴です。耐摩耗性、機械的強度、耐熱性に優れており、自動車部品やマンホールなどに多く使用されています。熱処理によって靭性と耐食性を向上させることも可能です。

鋳鉄はもろい、割れやすいというイメージが強いですが、球状黒鉛鋳鉄は十分な強度や靭性を持ち合わせており、負荷が多い部材としても十分に使用できます。

CV鋳鉄

CV鋳鉄のJIS記号はFCVです。2013年にJIS企画として定められました。CVのVはバーミキュラの略で、名前の通り芋虫状の組織を含んでいます。CV鋳鉄は、球状黒鉛鋳鉄を作る際に球状化が不完全な状態で完成したものです。不完全なものが完成した時に、偶然、ねずみ鋳鉄と球状黒鉛鋳鉄の中間の特性があることが分かりました。CV鋳鉄は初めは捨てられていましたが、現在は定着し積極的に生産されています。ねずみ鋳鉄よりも耐力・剛性が強く、球状黒鉛鋳鉄よりも熱伝導率が高くコストダウンになることから、ねずみ鋳鉄と球状黒鉛鋳鉄の中間的な位置づけで使用されることが多いです。

CV鋳鉄は熱伝導率が高い性質を持ち、振動を抑える効果も大きいので、自動車の排気系部品、シリンダブロックなどに用いられています。ねずみ鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、CV鋳鉄の中では、CV鋳鉄が自動車関係で多く使用されています。